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さよなら妄想

現実と妄想の狭間で

いつかあのアトリエでの出来事を思い出してきっと泣いてしまう

日記

一昨日、大学時代にお世話になった講師(現在68歳で隠居中)と食事をしてきた。

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色々な話をした後、講師は当然のように尋ねる。

「そーいや、まだチ◯コは描いてるの?笑」
「いや、もう描いてませんわ笑」

※注)ここからチ◯コが増えるので、全て“キノコ”に変換。

なぜこの講師がキノコについて聞いてきたのか?
それは大学時代に経験したある講座がキッカケ。

 

落ちこぼれを救った一言

ー将来は芸術家として生きていきたいー

幼い頃からの夢を実現すべく、高校卒業後にムサビへ入学したものの、現実は思っていた以上にハードな世界だった。息苦しかったともいえる。

ビックリするほどデッサンのうまい人の作品が講師に「フレッシュさがない」と一刀両断され、そのうまい人よりも数段レベルの低い私の作品は「形が全然甘いし、光で捕らえてないし、ゴニョゴニョゴニョ・・・」と指摘される量もハンパなかった。

本格的な指摘を求めてたけど、若さからか素直に受け取ることが出来ず、注意されては「なんだよアイツうるせえな」と文句ばかり。

自分には合わないのかな。。。そう思った時、一つの講座を発見する。

それはヌードデッサン。しかもオール。
裸?パンティなし?モールマル見え?

かなりの混乱。

少し考えた結果、当時は物ばかり描いてたので、気分転換に(やましい気持ちは当然0)に裸も悪くないなと思い、その日に申し込みをした。

 

繰り返すが、やましい気持ちは0だ。

 

講座開始日の朝はいつもより早く大学へ行き、アトリエ最前列中央のポジションを確保し、いつもより誇らしげにデッサン用のイーゼルを立てる。

時間前に周囲を見ると既に席はギッシリと埋まっていて、友人が「ちょ!あいつベスポジ確保してやがる!」と後ろからブーイングしていたが、そんな声を無視して今か今かと時が過ぎるのを待つ。

そしてモデルが遂に登場!
しかし、登場したのは・・・外国人男性だった。。。

 

『あれ?男?』アトリエ内がザワつく。
そりゃそうだ。皆勝手に女性モデルだと勘違いしてたから…

モデルは一言も話さずに一礼をした後、用意された椅子に腰掛け、着ていたガウンを脱ぎ、キノコを露わに。。。デ、、、デカい。。これが本場のキノコか。メジャー級、ゲルマン魂、カテナチオ、、、どの表現も下に見えるほどの名もなき海外産キノコ。

なぜキノコばかり注視しているか?それは最前列をキープしたことで対象物が近すぎてキノコしか視界に入らないため。その他にデメリットとして、近すぎて全体像が把握しにくい。

講座も席選びも失敗か?

いや、違う。

これは恐らく講師が用意した引っ掛け問題。目の前にそびえ立つキノコを前にしても正常を保てるか?外国産キノコを見て怖気づいてないか?きっと試されてる。そう自身を洗脳し、キノコ=成功への第一歩として切り替えて鉛筆を手にした。

 

『ほほう~。アンダーモールは上よりも下の縮れ(遊び)が大きく、竿はマグロも釣れそうな程しっかりしとる。カリはカリっとしてそうで力強い。ふむふむφ(..)』

こうして初回から開き直ったことで、以降はいかにキノコを忠実に再現できるかだけを考えてキノコを仕上げていく。

不思議と今まで講師に指摘されていたことも思い出す。

「あっ、あれはこういう意味だったのか!」
「おー!キノコだと光加減が顔と全然違うわー」

それまで考えてなかったことまで考えるようになった講座は面白く、あっという間に全6回の講座は終了する。

 

講座終了後には講師が数名の作品を例に取り「これは素晴らしいですね。全体像、光の加減」など全員の前で評価し始める。そんなピックアップ作品の中から私の作品を取り出し「これは・・・(フッ)」と。アトリエ中にも笑いが。。。やっちまったか?

しかし、講師の見解は違った。

「見る人の感性や見る場所によって変わります。アソーさんの位置なら確かにこう見えるでしょう。素晴らしいキノコですよ。」「恥じることはありません。十人十色という言葉があるように、芸術も人の数だけ答えが変わります。」と、大学に入ってから初めて講師が褒めてくれた。キノコだけど。

講師は続けて
・視点は一つだけではない
・見る人によっては芸術という考えは変わる
・自分の思ったことや考えたことを実行するのも芸術
と力説してくれた。これは今までの教えよりもすっと入った。

キッカケがキノコというのは考えものだけど、偏った考えを持っていた自身の頭を柔軟にしてくれたことに間違いはない。(キノコは硬そうだったけど)

 

幾つになってもキノコ

講師はその後もどこかで会えば「お!キノコ名人」と周囲がドン引きする名前で呼んでくれ、卒業から10年以上経過した今も話題はキノコキノコキノコ。。。少しノイローゼ気味になるほどキノコばかり。

 

そして、一昨日。

若いカップルが数名いる中で、おっさんとおじいちゃんの2人で「キノコ描いてる?」「描いてないわ笑」の話はやっぱり酷い。 

しかし、じいちゃんになってもキノコネタで笑うのも悪くないなと思った。そんなキノコの思い出。